DIC
DIC Corporation
最終更新日: 2026年3月22日
印刷インキ世界首位の化学メーカーが「色と機能」で未来を彩る――DIC Vision 2030で高付加価値企業への大転換
彩りと快適を提供し、人と地球の持続可能な未来に貢献する。
この会社ってなに?
あなたの日常はDICの技術に支えられています。スマートフォンやテレビの液晶ディスプレイに使われる液晶材料、食品パッケージの印刷インキ、お菓子の包装フィルム、自動車の塗料に含まれる顔料、さらにはサプリメントの原料となるスピルリナ(藻類)まで。新聞や雑誌を手に取ったとき、目に映るほぼすべての色彩にDICのインキ技術が関わっています。「色」と「素材」を通じて、見えないところで暮らしの質を支えている会社です。
DICは印刷インキで世界首位、有機顔料でも世界トップシェアを誇る化学メーカーです。PBR 0.77倍・PER 11.0倍と依然として割安圏にあり、長期経営計画「DIC Vision 2030」のPhase2を始動。FY2025/12は売上高1兆522億円・営業利益522億円と増益基調を維持し、FY2026/12は営業利益560億円・純利益330億円を見通しています。印刷インキに代わる成長エンジンとして、液晶材料・半導体用材料・パッケージング材料などの高付加価値領域への構造転換を推進中です。Oasisなどの物言う株主からの圧力もあり、美術館の縮小移転や資本効率改善策を打ち出しています。
会社概要
- 業種
- 化学
- 決算期
- 12月
- 本社
- 東京都中央区日本橋3-7-20 ディーアイシービル
- 公式
- www.dic-global.com
社長プロフィール
DICは1908年の創業以来、「色彩」と「素材」の技術を磨き続けてきました。印刷インキ世界首位の実績を基盤に、液晶材料や半導体用材料、サステナブルパッケージングなど、社会課題の解決に貢献する高付加価値領域への構造転換を加速しています。DIC Vision 2030 Phase2のもと、2030年度に営業利益800億円以上を目指し、持続的な企業価値向上と株主還元の充実を両立してまいります。
この会社のストーリー
川村喜十郎が東京で印刷インキの製造を開始。日本の印刷インキ産業の先駆者として歩み始めました。
法人化し、本格的な事業拡大に着手。戦後の復興期を経て国内最大のインキメーカーへと成長しました。
米国の大手インキメーカーSun Chemicalを買収し、一気に世界市場への足がかりを築きました。
創業100周年を機に「大日本インキ化学工業」から「DIC」へ社名変更。グローバルブランドとしての統一を図りました。
欧州を中心とした事業環境の悪化により約400億円の最終赤字を計上。構造改革への転機となりました。
長期経営計画の第2フェーズを発表し、2030年度に売上高1.24兆円・営業利益800億円を目指す成長戦略を始動。
注目ポイント
印刷インキと有機顔料の両分野で世界シェアトップを誇り、60カ国以上で事業を展開するグローバル化学メーカーです。
配当利回り5.20%はセクター平均の2.5倍。年間配当下限120円を設定し、総還元性向40%以上を掲げる安定還元姿勢が魅力です。
液晶材料、半導体用材料、PFAS不使用の新素材など、高付加価値領域への転換を推進。「色と機能」で社会課題の解決に挑んでいます。
サービスの実績は?
ひとめ診断
配当・優待はもらえる?
| 期 | 1株配当 | 配当性向 |
|---|---|---|
| FY2017/3 | 120円 | 29.4% |
| FY2018/3 | 125円 | 36.9% |
| FY2019/3 | 100円 | 40.3% |
| FY2020/3 | 100円 | 71.5% |
| FY2021/3 | 100円 | 216.8% |
| FY2022/3 | 100円 | 53.7% |
| FY2023/3 | 80円 | 0.3% |
| FY2024/3 | 100円 | 44.4% |
| FY2025/3 | 200円 | 58.5% |
2024年12月権利分をもって株主優待制度を廃止。今後は配当を中心とした還元に注力。
FY2024/12は年間配当200円と大幅増配を実施しました(記念配当含む)。FY2022/12は赤字決算にもかかわらず80円の配当を維持し、株主還元への意識の高さを示しました。Phase2では「1株当たり年間配当額の下限120円」「総還元性向40%以上」を掲げ、安定的な株主還元を重視する方針です。株主優待制度は2024年12月権利分で廃止され、配当による還元に一本化されました。
同業比較(収益性)
化学の同業他社平均と比べると…
業績推移
儲かってるの?
DICの業績は原材料価格と為替の影響を受けつつも、構造改革と高付加価値製品へのシフトにより回復基調にあります。FY2022/12には海外子会社の減損損失により398億円の最終赤字を計上しましたが、FY2023/12以降は増益に転じ、FY2024/12は営業利益522億円・純利益324億円と着実に改善。FY2025/12は営業利益560億円へさらなる増益を見込んでおり、「DIC Vision 2030」Phase2のもと機能性材料への構造転換が進んでいます。
事業ごとの売上・利益
印刷インキ(世界首位)、パッケージング用インキ、出版・商業インキ。デジタル化による紙媒体需要減をパッケージング用途の拡大でカバー
有機顔料(世界トップシェア)、液晶材料、カラーフィルタ用材料。ディスプレイの高精細化が追い風
エポキシ樹脂、ポリウレタン原料、半導体封止材料。エレクトロニクス・自動車向けの高付加価値材料が成長ドライバー
健康食品原料のスピルリナ(藻類)、新規事業。ヘルスケア領域での事業拡大を模索中
稼ぐ力はどのくらい?
| 期 | ROE | ROA | 営業利益率 |
|---|---|---|---|
| FY2021/3 | 9.6% | 0.4% | - |
| FY2022/3 | 3.2% | 1.4% | - |
| FY2023/3 | -1.1% | -3.2% | - |
| FY2024/3 | 11.6% | 1.7% | 4.2% |
| FY2025/3 | 6.0% | 2.5% | 5.0% |
FY2022/12の海外子会社減損によりROEは-10.0%まで落ち込みましたが、FY2024/12にはROE 6.6%・営業利益率5.0%まで回復しています。ただしROE 8%目標にはまだ届いておらず、資本効率の改善が引き続き課題です。高付加価値製品へのポートフォリオ転換が進めば、営業利益率のさらなる改善が期待されます。
財務は安全?
自己資本比率はFY2022/12の29.2%を底にFY2024/12は37.0%まで改善しました。有利子負債はFY2023/12の1兆198億円からFY2024/12には9,236億円へ削減。BPSは4,973円と着実に増加しており、株価3,844円に対してPBR 0.77倍と純資産を下回る水準にあります。財務健全性は着実に改善していますが、有利子負債水準はなお高く、デレバレッジの継続が重要です。
お金の流れは?
| 期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF | FCF |
|---|---|---|---|---|
| FY2021/3 | 448億円 | -1,476億円 | 995億円 | -1,028億円 |
| FY2022/3 | 79.3億円 | -732億円 | 839億円 | -652億円 |
| FY2023/3 | 891億円 | -665億円 | -29.2億円 | 226億円 |
| FY2024/3 | 462億円 | -171億円 | -626億円 | 291億円 |
| FY2025/3 | 730億円 | -206億円 | -454億円 | 524億円 |
キャッシュフローは大幅に改善しています。FY2020/12・FY2021/12は大型買収の影響でFCFがマイナスでしたが、FY2022/12以降はプラスに転換。FY2024/12は営業CFが730億円、FCFは524億円と過去最高水準を記録しました。投資CFの抑制と有利子負債の返済(財務CF -454億円)が進み、財務体質の改善が着実に進行しています。
この会社のリスク
有価証券報告書に記載されている主なリスク要因です。投資判断の参考にしてください。
税金はいくら払ってる?
| 期 | 税引前利益 | 法人税等 | 実効税率 |
|---|---|---|---|
| FY2021/3 | 438億円 | 394億円 | 90.0% |
| FY2022/3 | 399億円 | 223億円 | 55.9% |
| FY2023/3 | 92.2億円 | 491億円 | 532.5% |
| FY2024/3 | 379億円 | 166億円 | 43.8% |
| FY2025/3 | 443億円 | 119億円 | 26.9% |
FY2020/12の実効税率90.0%やFY2022/12の532.5%は、海外子会社の減損損失など一時的な特殊要因による異常値です。FY2024/12は税引前利益443億円に対し法人税等119億円、実効税率26.9%と正常化しており、グローバル展開による税務最適化の効果が表れています。FY2025/12は実効税率41.1%を見込んでいます。
社員の給料はどのくらい?
| 期 | 平均年収 | 従業員数 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 当期 | 799万円 | 20,884人 | - |
DICの連結従業員数は約21,184名で、平均年齢43.8歳、平均年収は759万円です。化学業界の中では標準的な水準にあり、世界60カ国以上に展開するグローバル企業としての人材基盤を有しています。平均勤続年数は18年と長期雇用が特徴的で、技術蓄積型の企業風土を反映しています。
誰がこの会社の株を持ってる?
安定株主が一定の割合を占めており、経営基盤は比較的安定しています。 外国人投資家の保有比率が高く、グローバルな投資家からの評価が反映されやすい銘柄です。 主な安定株主は昌栄。
筆頭株主は創業家系の昌栄(13.37%)で、長期安定株主としてDICの経営を支えています。注目すべきはOasis系ファンド3社合計で約11.6%を保有しており、物言う株主として美術品の換金売却や資本効率改善を求める株主提案を行っています。機関投資家(信託銀行経由)も上位に名を連ね、外国人保有比率は35.7%と化学セクターの中では高い水準です。
会社の公式開示情報
役員報酬
事業別の稼ぎ
| 事業名 | 売上 | 利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| パッケージング&グラフィック | - | - | - |
| カラー&ディスプレイ | - | - | - |
| ファンクショナルプロダクツ | - | - | - |
| その他(スピルリナ等) | - | - | - |
DICはパッケージング&グラフィック、カラー&ディスプレイ、ファンクショナルプロダクツの3事業セグメントを中心に展開しています。印刷インキ世界首位・有機顔料世界トップシェアという強固な市場地位を活かしつつ、成長戦略の軸は液晶材料、半導体用材料、パッケージング材料など高付加価値領域へシフトしています。役員報酬は取締役8名で4億4,800万円と、売上高1兆円規模の企業としては比較的抑制的な水準です。
この会社のガバナンスは?
女性役員比率23.1%は化学業界の中では高い水準にあり、ダイバーシティ経営を推進しています。連結子会社152社を世界60カ国以上で展開するグローバル企業として、ガバナンス体制の強化が求められており、Oasis等のアクティビスト株主からの提言も踏まえて資本効率改善に取り組んでいます。
会社の計画は順調?
※ 会社が公表した計画に対する達成度の評価であり、投資についての評価・推奨ではありません
年度別の予想精度(計画を守れてる?)
| 年度 | 当初予想 | 修正予想 | 実績 | 乖離 |
|---|---|---|---|---|
| FY2024/12 | 1兆1,100億円 | — | 1兆522億円 | -5.2% |
| 年度 | 当初予想 | 修正予想 | 実績 | 乖離 |
|---|---|---|---|---|
| FY2024/12 | 480億円 | — | 522億円 | +8.7% |
| 年度 | 当初予想 | 修正予想 | 実績 | 乖離 |
|---|---|---|---|---|
| FY2024/12 | 240億円 | — | 324億円 | +35.0% |
当初予想 = 期初に会社が発表した数字 / 乖離 = 予想と実績のズレ(+なら上振れ)
「DIC Vision 2030」のPhase1は売上高こそ未達でしたが、営業利益は目標を上回る522億円を達成しました。FY2022/12の海外子会社減損による大幅赤字からV字回復を果たした点は評価できます。Phase2では2030年度に売上高1兆2,400億円以上、営業利益800億円以上、総還元性向40%以上を目標に掲げ、機能性材料やサステナブル製品への構造転換をさらに加速させる方針です。
この株を持っていたら儲かった?
この会社の株主総利回り(TSR)を、日本株全体の平均(TOPIX)と比較したグラフです。青い線が上にあるほど、平均より良い成績を出しています。
過去5年間のTSR(株主総利回り)は127.3%と、投資元本を上回っているものの、同期間のTOPIX 182.5%を大きく下回るアンダーパフォーマンスとなっています。FY2022/12の大幅赤字による株価下落が響いた形ですが、直近2年はTSRが改善傾向にあり、増配と構造改革の成果が徐々に表れ始めています。
※ 配当を含まない株価ベースのリターンです。過去の実績であり、将来のリターンを保証・示唆するものではありません。
もし5年前に投資していたら?
| 年度末時点 | 評価額 | 損益 | TSR |
|---|---|---|---|
| FY2021 | 89.1万円 | -10.9万円 | -10.9% |
| FY2022 | 102.0万円 | +2.0万円 | 2.0% |
| FY2023 | 86.5万円 | -13.5万円 | -13.5% |
| FY2024 | 103.8万円 | +3.8万円 | 3.8% |
| FY2025 | 127.3万円 | +27.3万円 | 27.3% |
※ 有価証券報告書記載のTSR(株主総利回り)に基づく仮定の計算です。配当再投資を含みます。将来のリターンを保証するものではありません。
株の売買状況と今後の予定
PER 11.0倍、PBR 0.77倍と、化学セクター平均と比較して割安なバリュエーションが際立っています。配当利回り5.20%はセクター中央値2.08%を大きく上回り、インカム面での魅力が非常に高い銘柄です。信用倍率16.08倍と買い残が積み上がっており、信用面ではやや需給が重い状況ですが、Oasisなどのアクティビスト株主の存在が株価の上昇カタリストとなる可能性もあります。
メディアでどれくらい注目されてる?
メディア露出
メディア分布
競合比較
どんな話題が多い?
最近の出来事
ケアテックスタートアップ企業abaへ出資し、マテリアル技術とロボティクス技術の融合による介護分野への参入を発表。
AIロボティクス企業アールティへ戦略的出資を実施。素材技術とAIの融合で労働力不足への対応を目指す。
FY2025/12通期決算を発表。売上高1兆522億円、営業利益522億円と増益。同時に長期経営計画Phase2を公表。
DIC川村記念美術館の佐倉での営業が3月末で終了。東京・六本木への縮小移転を決定し、保有美術品の取り扱いが注目される。
最新ニュース
DIC まとめ
ひとめ診断
「世界首位のインキメーカーが機能性材料で第二の成長曲線を描く――DIC Vision 2030で売上1.2兆円・営業利益800億円を目指す」
※ 本ページの情報は投資助言ではありません。掲載データは正確性を保証するものではなく、投資判断はご自身の責任でお願いします。
同じ業種の企業
「化学」に分類される他の企業
『農薬と医薬品添加剤で稼ぎ、有機ELで未来に種をまく』創業100年超の化学メーカー
『BOTANIST』『SALONIA』のヒットメーカー、巧みなブランド戦略で美容市場を席巻するD2Cの先駆者
スマホやタブレットの『キレイな画面』を支える、ニッチトップの高機能フィルム技術者集団
『常に考える』を社是に、ニッチな電設資材で圧倒的な利益率を叩き出す『超ホワイト企業』
産業ガスで国内首位・世界4強。三菱ケミカルG傘下でグローバル成長を加速する空気の巨人
『タイヤの素』から『家の顔』まで作る化学の老舗が、M&AとCVC設立で売上1000億円を目指す野心的な拡大フェーズに突入
『空気をかえよう』でお馴染み、生活防衛の王者が香りのDXとM&Aで再成長を目指す
インクと樹脂の老舗が、EVから化粧品まで手掛ける『色の総合商社』として資産価値の再評価を待つ状態