信越化学工業
Shin-Etsu Chemical Co.,Ltd.
最終更新日: 2026年4月30日
「中計は時間の無駄」-- 塩ビ・半導体ウエハ世界首位、利益率29%の孤高の化学王者
時代が求める素材を卓越した技術で提供し、人々の暮らしや産業の発展、持続可能な社会の実現に貢献する
この会社ってなに?
あなたのスマートフォンやパソコンの中にある半導体チップ。その土台となる「シリコンウエハ」という薄い円盤を作っている世界トップ企業が信越化学工業です。さらに、住宅の窓枠や水道管に使われる塩化ビニル(プラスチックの一種)でも世界一。シャンプーの手触りを良くするシリコーン、スマホの画面を守るコーティング材も同社の製品です。名前を見かけることは少ないですが、実はあなたの暮らしのあらゆる場面を「縁の下の力持ち」として支えている素材メーカーです。
FY2025/3の売上高は2兆5,612億円、営業利益は7,421億円と増収増益で着地。塩化ビニル樹脂と半導体シリコンウエハの両分野で世界トップシェアを握り、営業利益率29%・自己資本比率83%という圧倒的な収益力と財務健全性を誇ります。FY2026/3は塩ビ市況の軟化と半導体ウエハ出荷回復の遅れから売上高2兆4,000億円・営業利益6,350億円の減収減益予想ですが、3Q累計では売上1兆9,340億円と前年並みを維持。米国で塩ビ原料増産に約5,300億円の大型投資を決定し、中長期の成長基盤を強化しています。
会社概要
- 業種
- 化学
- 決算期
- 3月
- 本社
- 丸の内一丁目4番1号 丸の内永楽ビルディング
- 公式
- www.shinetsu.co.jp
社長プロフィール

最高水準の品質、技術、サービスで「成長し続ける」ことにこだわります。中長期的な目線で社会の課題解決と価値創造に真摯に取り組んでまいります。
この会社のストーリー
長野県と新潟県の県境にある信越地方を流れる河川の水力を利用し、化学肥料の製造からスタートしました
高度経済成長期のインフラ整備を支えるため、塩化ビニル樹脂の生産を拡大。独自の技術力で品質と生産効率を高めました
オイルショックの逆風を乗り越え、米国テキサス州でShintech社を設立。半導体シリコンウエハ事業への本格投資も開始しました
長年の技術開発と果断な設備投資により、塩化ビニル樹脂と半導体シリコンウエハの両分野で世界シェア1位を獲得しました
AI・5G向け先端半導体材料の需要拡大を追い風に、米国で5,300億円の塩ビ原料増産投資を決定。さらなる成長基盤を構築しています
注目ポイント
住宅・インフラに不可欠な塩化ビニル樹脂と、すべての電子機器の心臓部である半導体シリコンウエハの両方で世界首位。この「二本柱」が安定成長の源泉です
中計を出さず変化に即応する独自の経営哲学。営業利益率29%は化学業界で突出し、実質無借金の財務基盤と大規模株主還元を両立しています
最先端AI半導体向けシリコンウエハ、EV用パワー半導体向けGaN基板、データセンター省電力化素材など、次世代社会に不可欠な材料を提供しています
サービスの実績は?
ひとめ診断
配当・優待はもらえる?
| 期 | 1株配当 | 配当性向 |
|---|---|---|
| FY2016/3 | 23.9円 | 31.4% |
| FY2017/3 | 26.1円 | 29.0% |
| FY2018/3 | 30.5円 | 22.4% |
| FY2019/3 | 43.1円 | 27.6% |
| FY2020/3 | 46.2円 | 29.1% |
| FY2021/3 | 52.5円 | 35.4% |
| FY2022/3 | 84円 | 33.2% |
| FY2023/3 | 500円 | 143.7% |
| FY2024/3 | 100円 | 38.5% |
| FY2025/3 | 106円 | 39.3% |
なし
FY2023/3の配当100円(株式分割調整前は500円、配当性向143.7%の特別配当含む)をピークに、FY2024/3以降は100〜106円で安定推移。FY2026/3は前期と同額の106円(中間53円・期末53円)を予想し、配当性向は42.4%に上昇見込み。自社株買い・TOBと合わせた総還元性向は70%超と積極的な株主還元を継続しています。
同業比較(収益性)
化学の同業他社平均と比べると…
業績推移
儲かってるの?
FY2023/3に売上高2.8兆円・営業利益率35.5%の過去最高を記録後、塩ビ・半導体市況の調整で減収減益に転じました。FY2025/3は増収増益で回復基調を示しましたが、FY2026/3は再び減益予想。ただし営業利益6,350億円・利益率26%台は化学業界で依然として突出した水準です。3Q累計の営業利益4,980億円は通期計画の78%に達しており、上振れ余地も残ります。
事業ごとの売上・利益
米国Shintech社を中核に塩ビ樹脂で世界シェア首位。住宅配管・建材向けが主力
300mmシリコンウエハで世界シェア約30%。AI・5G向け先端半導体の需要拡大が追い風
シリコーン樹脂、セルロース誘導体、レアアース磁石など多彩な高付加価値製品群
半導体用フォトレジスト、電子産業用機能性材料の加工・販売
稼ぐ力はどのくらい?
| 期 | ROE | ROA | 営業利益率 |
|---|---|---|---|
| FY2021/3 | 10.7% | 8.7% | - |
| FY2022/3 | 16.3% | 12.3% | - |
| FY2023/3 | 19.7% | 15.0% | - |
| FY2024/3 | 12.8% | 10.1% | 29.0% |
| FY2025/3 | 12.0% | 9.5% | 29.0% |
FY2023/3に営業利益率35.5%・ROE 17.6%の最高水準を記録。市況調整で低下したものの、FY2025/3でも営業利益率29.0%と化学業界では群を抜く高収益体質を維持しています。ROE 11.0%は自己資本比率83%という極めて厚い資本基盤を考慮すれば優秀な水準です。
財務は安全?
総資産5.6兆円、自己資本比率82.6%と鉄壁の財務基盤。有利子負債はゼロ(実質無借金経営)で、5期連続で自己資本比率80%超を維持しています。BPSは5年で1,354円→2,376円と76%成長。2023年1月の株式分割(1:5)後のBPSで、現在の株価約6,400円に対しPBR約2.7倍は成長プレミアムを反映した水準です。
お金の流れは?
| 期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF | FCF |
|---|---|---|---|---|
| FY2021/3 | 4,012億円 | -2,507億円 | -911億円 | 1,505億円 |
| FY2022/3 | 5,535億円 | -2,537億円 | -1,225億円 | 2,998億円 |
| FY2023/3 | 7,880億円 | -1,865億円 | -4,236億円 | 6,015億円 |
| FY2024/3 | 7,552億円 | -1.1兆円 | -3,695億円 | -3,440億円 |
| FY2025/3 | 8,819億円 | -1,426億円 | -4,549億円 | 7,394億円 |
営業CFは8,819億円(FY2025/3)と過去最高水準。FY2024/3は米国Shintech社の大規模設備投資で投資CFが1兆円超のマイナスとなりFCFが赤字でしたが、FY2025/3は投資一巡でFCF 7,394億円と大幅に回復。財務CFのマイナスは自社株買い・TOB・配当による株主還元の充実を反映しています。
この会社のリスク
有価証券報告書に記載されている主なリスク要因です。投資判断の参考にしてください。
税金はいくら払ってる?
| 期 | 税引前利益 | 法人税等 | 実効税率 |
|---|---|---|---|
| FY2021/3 | 4,051億円 | 1,114億円 | 27.5% |
| FY2022/3 | 6,944億円 | 1,943億円 | 28.0% |
| FY2023/3 | 1.0兆円 | 3,120億円 | 30.6% |
| FY2024/3 | 7,872億円 | 2,671億円 | 33.9% |
| FY2025/3 | 8,205億円 | 2,865億円 | 34.9% |
税引前利益はFY2023/3に1兆202億円のピークを記録。実効税率はFY2021/3の27.5%からFY2025/3は34.9%に上昇しており、海外事業の利益構成比の変化や税効果の影響を反映しています。FY2026/3は減益見込みながらも、年間2,300億円規模の納税は日本有数の水準です。
社員の給料はどのくらい?
| 期 | 平均年収 | 従業員数 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 当期 | 876万円 | 27,274人 | - |
平均年収は約876万円と化学業界ではトップクラスの給与水準を維持しています。連結従業員数は約27,274名(単体3,881名)で、4年間で約540名増加し積極的な人材投資を継続。平均年齢41.3歳・平均勤続年数19.2年と、若返りと定着率の高さを両立しています。
誰がこの会社の株を持ってる?
金融機関34.2%+事業法人5.9%+八十二銀行2.9%+日本生命3.9%で安定株主約44%。外国人投資家が44.7%と高く、グローバルな資金フローの影響を受けやすい構造
信託銀行経由の機関投資家が筆頭株主で、日本マスタートラスト信託銀行が18.1%と最大。外国人投資家の保有比率が44.7%と非常に高く、グローバルな評価が株価に直結する構造です。日本生命(3.9%)や八十二銀行(2.9%)、明治安田生命(2.7%)など政策保有株主が安定株主として機能しています。信越化学の本社がある長野県の地元銀行・八十二銀行の保有は創業来の関係を示しています。
会社の公式開示情報
役員報酬
事業別の稼ぎ
| 事業名 | 売上 | 利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| 生活環境基盤材料(塩化ビニル樹脂・か性ソーダ等) | 約1兆2,500億円 | 約3,800億円 | 30.4% |
| 電子材料(半導体シリコンウエハ等) | 約6,800億円 | 約2,200億円 | 32.4% |
| 機能材料(シリコーン・セルロース等) | 約4,200億円 | 約1,000億円 | 23.8% |
| 加工・商事・技術サービス | 約2,100億円 | 約420億円 | 20.0% |
塩化ビニル樹脂と半導体シリコンウエハの2大事業が売上・利益の約7割を占めるのが特徴です。両事業とも世界トップシェアを握り、30%超の高い営業利益率を実現しています。機能材料セグメントもシリコーン・セルロースなど高付加価値品を展開し利益率23.8%と健全。事業リスクとしては市況変動、地政学リスク、為替変動を挙げており、特に中国製シリコンウエハの台頭が中期的な競争環境の変化要因として注視されています。
この会社のガバナンスは?
女性役員比率23.1%(13名中3名)を達成し、ダイバーシティ推進に取り組んでいます。連結子会社99社を擁するグローバル体制のもと、社外取締役比率55%と透明性の高いガバナンスを構築。設備投資額4,346億円は将来の成長に向けた積極的な投資姿勢を示しており、平均勤続年数19.2年という高い定着率が組織の安定性を裏付けています。
会社の計画は順調?
※ 会社が公表した計画に対する達成度の評価であり、投資についての評価・推奨ではありません
年度別の予想精度(計画を守れてる?)
| 年度 | 当初予想 | 修正予想 | 実績 | 乖離 |
|---|---|---|---|---|
| FY2024/3 | 2兆5,000億円 | — | 2兆4,149億円 | -3.4% |
| FY2025/3 | 2兆5,000億円 | — | 2兆5,612億円 | +2.4% |
| 年度 | 当初予想 | 修正予想 | 実績 | 乖離 |
|---|---|---|---|---|
| FY2024/3 | 7,350億円 | — | 7,010億円 | -4.6% |
| FY2025/3 | 7,350億円 | — | 7,421億円 | +1.0% |
当初予想 = 期初に会社が発表した数字 / 乖離 = 予想と実績のズレ(+なら上振れ)
信越化学工業は「中計作成は時間の無駄」として中期経営計画を開示しない稀有な企業です。代わりに毎年の業績ガイダンスを保守的に設定し、FY2025/3は売上・営業利益ともにガイダンスを上回って着地。FY2026/3は3Q累計で営業利益進捗率78%と、通期計画に対してほぼ例年並みのペースで推移しています。
この株を持っていたら儲かった?
この会社の株主総利回り(TSR)を、日本株全体の平均(TOPIX)と比較したグラフです。青い線が上にあるほど、平均より良い成績を出しています。
5年間のTSR(株主総利回り)は217.7%とTOPIX(213.4%)をわずかに上回る水準。FY2024には322.2%まで上昇しましたが、FY2025は市況調整により217.7%に低下。長期ではTOPIXと概ね同等のパフォーマンスですが、配当+自社株買いの還元を含めた総合リターンでは市場平均を上回っています。
※ 配当を含まない株価ベースのリターンです。過去の実績であり、将来のリターンを保証・示唆するものではありません。
もし5年前に投資していたら?
| 年度末時点 | 評価額 | 損益 | TSR |
|---|---|---|---|
| FY2021 | 175.8万円 | +75.8万円 | 75.8% |
| FY2022 | 181.2万円 | +81.2万円 | 81.2% |
| FY2023 | 209.9万円 | +109.9万円 | 109.9% |
| FY2024 | 322.2万円 | +222.2万円 | 222.2% |
| FY2025 | 217.7万円 | +117.7万円 | 117.7% |
※ 有価証券報告書記載のTSR(株主総利回り)に基づく仮定の計算です。配当再投資を含みます。将来のリターンを保証するものではありません。
株の売買状況と今後の予定
PER 25.6倍・PBR 2.70倍は化学業界平均を大きく上回りますが、これは営業利益率29%・自己資本比率83%という圧倒的な収益力と財務健全性が評価されたプレミアムです。信用倍率3.10倍と買い残が売り残の3倍で、個人投資家の強気姿勢が見られます。アナリストの平均目標株価は現値を上回る水準で、買い推奨が多数を占めています。
メディアでどれくらい注目されてる?
メディア露出
メディア分布
競合比較
どんな話題が多い?
最近の出来事
米国で塩ビ原料増産に約5,300億円(34億ドル)の大型投資を発表。原料自給率の向上と競争力強化を図る
FY2026/3 3Q累計は売上高1兆9,340億円、営業利益4,980億円(前年同期比14.8%減)。塩ビ市況軟化が影響
FY2025/3通期は売上高2兆5,612億円・営業利益7,421億円と増収増益で着地
損保・銀行5社から940億円規模の自社株TOBを実施。政策保有株の解消と資本効率向上を推進
上限2,300万株・1,000億円規模の自社株買いを発表。積極的な株主還元姿勢を示す
最新ニュース
信越化学工業 まとめ
ひとめ診断
塩化ビニルと半導体シリコンウエハで世界首位 -- 営業利益率29%・自己資本比率83%の超優良化学メーカー
※ 本ページの情報は投資助言ではありません。掲載データは正確性を保証するものではなく、投資判断はご自身の責任でお願いします。
同じ業種の企業
「化学」に分類される他の企業
美容室をコンサルで囲い込み、高付加価値シャンプーで稼ぐ『髪の毛のキーエンス』
『激落ちくん』で家庭を席巻し、M&Aで『バルサン』も手に入れた、日本の暮らしを支える隠れたインフラ企業
『パーフェクトワン』一本足打法から、M&AとDX投資で若者世代攻略と事業多角化へアクセルを踏む化粧品通販の雄
化粧品大手コーセーが持株会社制へ移行。19年ぶり社長交代で脱・創業家経営に踏み出し、M&Aによるグローバル成長を加速
『半導体の磨き粉』と『お菓子の酸味』、ニッチな化学素材で世界シェアを独占する技術者集団
『PCR検査』特需の終焉で業績急降下、親会社の救済TOBで再生医療への再投資を目指すバイオ企業
国内農薬の雄が、親会社ADEKAのもとグローバル展開を加速、南米・インド市場で成長果実を狙うディフェンシブ銘柄
37期連続増配の配当貴族。K27改革で利益回復が加速、2026年7月に株式2分割を予定